──ねぇ、こっちに来ない? ここは寒くて、暗くて、ちょっぴり悲しいの。
新卒で入った会社を辞め、持て余した時間で動画サイトを閲覧していた主人公。
時刻は深夜2時。ふと目に入ったのは、サムネイルが真っ白の奇妙な配信。
「ねぇ、聞こえる? 私が、見える?」
閲覧数は1。自分以外には誰も見ていない配信で、まるで放送事故とでも言わんばかりの戸惑いを見せる、画面の向こうの〝誰か〟。
翌日、主人公のもとに一通のメッセージが届いていた。
「私と一緒に『終乃りんね』をプロデュースしてくれませんか?」
〝終末系VTuber〟を名乗る謎めいた少女と、終わりのない旅が始まる。
──VTuberになるのって、臨死体験に似てる。
終末系VTuberとして、バーチャル空間に現出した廃電車から配信を行うりんね。
過去の記憶の一切を失っている彼女の目的は、自身のことを知る人物へとアクセスするため。
しかし、終乃りんねとして活動するにつれて、自身の不安定なアイデンティティを吐露していく。
「この世界には年齢も性別も時間の概念もない。ただ、魂が永遠に彷徨うだけ。それって、死後の世界と似てるって思わない?」
彼女の本当の目的とは何か。次々浮かび上がってくる疑問をぶつけながら、やがて主人公の暗くて苦い過去も明かされていく。
──我々は夢を織りなす糸でできている。
VTuberの活動を、「世界の出口を探す旅」と形容するりんねは、唐突にこう呟く。
「最近、同じ夢ばかり見るの。どこか、遠くへ、旅立つ夢」
旅立ちの夢、それは死の象徴。やがて迎える、まったく違った2つのエンディング。
VTuberはどこから来たのか。VTuberとは何者か。VTuberは、そして我々はどこへ行くのか。